※このページは「認知症の症状1- 中核症状」の続きです
認知症の「周辺症状」は、中核症状がもととなり、行動や心理に表れる症状です。本人の性格や環境、心理状態によって人それぞれに表れ方が異なります。
「周辺症状」は、近年「BPSD(行動・心理症状)」という名称が一般的になりつつあります。これは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったものです。
周辺症状(BPSD(行動・心理症状))の種類
「周辺症状」は周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状であり、人の置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きてくるため、人それぞれ表れ方が違います。介護者が対応に苦慮する場面がより多くなります。
逆に、病気をよく理解して適切に対応したり、リハビリなどを行うことで症状の改善が期待できる可能性もあります。
妄想
人に傷つけられたとか物を盗られたと訴える症状です。とくに「もの盗られ妄想」はよく見られる症状なんですが、介護する側にとってはもっとも切ないもののひとつです。
自分が置き忘れたり使ってしまったことを忘れているため、「盗まれた」と家族や介護者など身近な人に疑いの目を向けるようになります。
抑うつ
認知症になると、できないことが増えることによって不安を感じ、抑うつ状態になることがあります。また、進行するにしたがって自分の症状に無関心になることが多くなります。
認知症による抑うつとうつ病(老人性うつ病)とは混同されやすい病状です。しかし、うつ病では自責的・悲観的な傾向が強いのが特徴です。認知症による抑うつとうつ病を併発することもあります。
両者の治療法は異なりますので、おかしいなと思ったら医師に相談することが大切です。
不安・焦燥
記憶障害や度重なる失敗によって将来への不安が募ったり、イライラすることが暴言や暴力につながることもあります。
介護抵抗
認知症の患者さんが介護を嫌がるのは理由があってのことです。 介護されることを理解できなかったり、自尊心から受け入れられないなど、理由は様々です。患者さんの話をよく聞き、その理由を知ることが大切です。
暴力・暴言
認知症の方は思っていることをうまく伝えられません。また、感情をコントロールする機能も衰えてきます。このため、不満や不安、いらだちが募ったときに暴力や暴言となって表れることがあります。その背景にある原因や本人の気持ちをよく知ることが大切です。
徘徊
認知症の中核症状から結果として徘徊・行方不明になってしまうことがあります。家を出た目的を忘れてしまう(記憶障害)、方向がわからなくなる(見当識障害)、誰かに確認することができない(判断力の低下)など。
食行動異常
いま食べたのにすぐ食事はまだかという(記憶障害)、食べ物でないものを食べてしまう(失認)など、認知症の中核症状からくるものです。
睡眠障害
認知症の人は睡眠のリズムが崩れやすく、不眠や昼夜逆転といった睡眠障害がおこりやすくなります。
幻覚
実在しないものが「見える」幻視のほか、幻聴・幻味・幻臭・体感幻覚などがあります。レビー小体型認知症で多くみられるのが幻視、アルツハイマー型では幻聴が現れることがあります。
「周辺症状」には、このほかに「せん妄」「多弁」「多動」「依存」「心気(思い込み・心配しすぎ)」「仮性作業(目的や意味のわからない作業)」「不潔行為」など様々な症状があります。