読んだ本をごく短いコメントをつけてご紹介しています。
評価は、あくまでも個人的な感想であり、取り上げた作品に対する一般的な評価を意識したものではありません。
JR上野公園口
著者:柳美里
評価:★★★★☆ オススメ
コメント:
前回に続き柳美里さんの小説。刊行は2014年。アメリカで最も権威のある文学賞の一つである、全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞(2020年)。
福島県相馬郡(現在の南相馬市)出身、1933年生まれの一人の男が、出稼ぎ労働者として上野駅に降り立ち、一度は帰郷するも再び上京し、ホームレスとなった人生を描いたもの。ラストは東日本大震災を思わせる場面で終わります。
人生には過去と現在未来の分け隔てはない。誰もが、たった一人で抱えきれないほど膨大な時間を抱えて、生きて、死ぬ―
「見えない」ことになっている人、死者、そのような人々への著者のまなざしが私たちを照らす。
ストーリは要約しきれないのではぶきます。『家屋シネマ』から20年、これほどまでに思索が深まり、技量が高まったのかとすなおに驚きました。個人的には、『洪水はわが魂に及び』のころの大江健三郎に共通するものがあるのではないかと思います。
暗く、重いが、どこか詩的なひびきをもっている本作品は、いとうせいこうさんの『想像ラジオ』を想起させました。次回は『想像ラジオ』を取り上げます。
【評価一覧】
★★★★★ 超オススメ・・読んだらきっといいことがあります
★★★★☆ オススメ・・自信をもっておすすめします
★★★☆☆ 興味があれば・・興味がある人にはオススメ
★★☆☆☆ 時間があれば・・ヒマを持てあましている人にはいいかも
★☆☆☆☆ 読まなくてもいいかな・・難アリなので全部は読まなくてもいいです
☆☆☆☆☆ クソ本・・読む価値なし。多分ご紹介しない