今回より、特異的腰痛の代表的な症状である坐骨神経痛(※)の原因となる病気について書いてみます。
まずは「椎間板ヘルニア」から。
椎間板ヘルニアは首にも起こりますので、腰の場合は正確には「腰椎椎間板ヘルニア」といいます。
ちなみに、わたくしにも椎間板ヘルニアがあるそうです。
※坐骨神経痛は病名ではなく、症状をいいます(坐骨神経痛という病気を治療するということではなく、坐骨神経痛の原因となっている病気をつきとめ治療するということです)。
脊椎の構造
脊椎(背骨、脊柱)の役割は、次のとおりです。
- 頭・からだをささえる
- 上半身を前後左右に動かす
- 脊髄(神経)をまもる
その構造は、あたまの骨のすぐ下から次のようになります。
- 7個の椎骨(ついこつ)からなる頸椎(首の骨・図のピンクの部分)
- 12個の椎骨からなる胸椎(背中側の骨・図のブルーの部分)
- 5個の椎骨からなる腰椎(腰の骨・図の黄色の部分)
- 5個の椎骨が癒合して一体となった仙椎(仙骨・図の水色の部分)
- 尾椎(尾てい骨・図の一番下の部分)
椎骨とは、1個1個独立した骨であり、脊椎を構成しています。頸椎から腰椎までの椎骨は、くっついておらず、椎骨どうしの間には後で述べる椎間板がはさまっています。
多くのじん帯が脊椎に密着して取り囲んでおり、椎骨がずれないようにしています。さらにそのまわりを脊柱起立筋や多裂筋などの多くの筋肉が囲み、支えています。
また、椎骨のおなか側(図では左側)の円柱のように見える部分を椎体、背中側の部分を椎弓といい、その間に空間があります。椎骨がつながるとトンネル状になり、脊柱管と呼ばれます。ここに脳からつながる神経の束がとおります。
椎間板とは
椎間板とは、椎骨と椎骨との間にあってクッションの役割をはたしているものです。骨と骨とが直接ぶつかったら大変ですもんね。背骨が動くための関節の役割も助けます。
椎間板は円形の線維軟骨であり、ゼラチン状の髄核とコラーゲンを含む線維輪から成っています。やわらかい髄核のまわりを丈夫な繊維輪が取り囲む構造となっています。髄核は多量の水分を含むため、椎間板全体は弾力に富むクッションとなるものです。
椎間板ヘルニアとは
椎間板がなんらかの原因で変形し、本来の場所から飛び出しヘルニア状態(※)になったものが「椎間板ヘルニア」です。
飛び出した椎間板(図のピンクの部分)が脊柱管を通る神経(図の青い部分)を圧迫したり刺激したりすると、腰や脚に強い痛みやしびれを生じさせるようになります。
これが、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛です。
なお、ヘルニアは、髄核が椎間板より飛び出したものと説明することもあります。
※ヘルニアとは、組織・臓器の一部、または全部が体壁や体内にある隙間を通って、本来の位置から飛び出した状態をいいます。例えば、そけいヘルニア(いわゆる脱腸)、頚椎椎間板ヘルニアなど。
椎間板ヘルニア発症の原因
腰椎椎間板ヘルニアは、多くの場合日々の生活の中で椎間板への負担が積み重なり発症します。要因として次のようなものが考えられます。
環境要因
生活の中でというよりは、仕事でという方が正確でしょう。
長時間の車の運転や中腰での作業、重いものを持つなど、腰に負担のかかりやすい仕事の人ほどなりやすいということです。
職業ドライバーや金属・機械業就労者は事務職の人に比べ、約3倍腰椎椎間板ヘルニアになりやすいと言われているそうです。最近では、介護職の方はまちがいなく腰のトラブルに悩まさていると想像します。職業からの腰痛は労災の対象となる場合もありますので、調べてみるとよいと思います。
スポーツでも、つよい負荷がかかった場合に椎間板ヘルニアになるケースが多いようです。
腰椎椎間板ヘルニアは広い年齢層で発症しうることが特徴です。
遺伝的要因
体質や骨の形なども原因となりうるとされます。
加齢
高齢になるとからだの組織も弱くなり、過去の生活習慣も積み重なるため、発症しやすくなると思われます。
椎間板ヘルニアの治療
腰椎椎間板ヘルニアの治療には保存療法と手術療法があります。
詳しくは、腰痛の治療1- 特異的腰痛の治療の記事をご覧ください。