今回は「お酒」と「介護」について思いつく限りでまとめてみました。参考になればうれしいです。
介護される人とお酒
介護される人の多くは高齢者と思われますので、高齢者とお酒という観点から考えてみます。
高齢者とお酒
加齢とともに酒には弱くなります。実感している人も多いでしょう。その理由は次の二つです。
- アルコールの分解能力が落ちる
加齢により肝臓による処理能力が落ち、アルコールを分解する速度が遅くなる。 - 体内の水分の割合が落ちる
新生児で80%、成人が55~60%あった体内の水分の割合が、高齢者は50%代まで下がる。同じ量のアルコールを摂取したばあい、その血中濃度は相対的に高くなる。
若いころからたくさん飲んでいた人が、高齢になってからも同じペースで飲んでいると、さまざまな問題が生じるようになります。
転倒の危険が増すこともありますが、ほかにも、認知症への影響、アルコール依存症の問題も見のがせません。
認知症とお酒
いわゆるお酒を飲むと脳細胞が死ぬというのは、あながちウソではないようです。大量飲酒と脳の萎縮は正比例するという研究結果があるそうです。
また、大量飲酒による脳血管疾患やビタミンB1欠乏などの栄養障害を原因とする認知症の発症も可能性があるということです。
ただし、飲酒しないかまたは大量飲酒する人よりも、少量飲酒する人のほうが認知症を発症する危険性が低い、もしかしたら少量飲酒は認知症の予防になるかもしれないという研究結果もあるそうです。
酒は「百薬の長」、しかして「百毒の長」。
高齢者とアルコール依存症
高齢者の人口割合が増えるにつれて、高齢者のアルコール依存症の割合も増加しているそうです。
高齢者のアルコール依存症の特徴は次のとおりです。
- 高齢者は少量のアルコールで影響を受けやすい
前述のように、アルコール分解能力が低下しており、また体内の水分割合が低下しているためアルコールの血中濃度が高くなりやすい。酒に弱くなっているのですね。 - 自由な時間が増えている
定年退職などで自由な時間が増え、何をしていいのかわからいので、ついお酒をというのがアルコール依存症のきっかけになりやすいとのことです。 - 認知症との合併が多い
長年のアルコール使用により脳がダメージを受け、脳萎縮が進行することが関係していると思われます。
高齢者の飲酒量は、現役時代の半分くらいがいいようですよ。
介護する人とお酒
介護者とお酒
介護する人は、家庭内で親族等のお世話をする人と、介護職の人とに分けられます。
いずれの人も、介護から強いストレスを受けるため、酒が唯一の楽しみということになりかねません。しかも親族を介護する人も高齢者というケースも少なくなく、問題はいっそう複雑となります。
ふだん介護に追われている人でも、大量の酒を飲み続ければ問題が出ることは、ほかの人と変わりありません。
介護者とアルコール依存症
介護する人とアルコール依存症との関係は、介護する人自身との問題と、介護職の人が在宅介護の訪問先でアルコール依存症の高齢者を発見した場合とがあります。
介護する人自身の問題。ストレス解消のためのお酒がつい増えていくというところから、アルコールが手ばなせなくなってしまうということが多い。とくに、眠れないからと飲む寝酒はよくないようです。
アルコール依存症になってしまうと、生活が機能しなくなってしまいますので、重大な危機となります。
介護職の人が在宅介護の訪問先でアルコール依存症の高齢者を発見した場合。家族も気がついていても、その場しのぎの対処しかしていないことが多いようです。
家族が本人を説得して病院に連れて行こうとしてもまず無理ですので、まずは介護職の人が支援の専門家を紹介するといった対処が必要と思われます。