結論から言えば、
- 否定しない
- 反論しない
- 共感をもって話を聞く
- 想像力を働かせる
- 笑顔を絶やさない
認知症の人の心の世界
日々介護をしている人にとって、上の結論は「とてもできない」「わかってはいるけど…」と言われる方も多いかと思います。あるいは腹立たしく思われる方もいらっしゃるかもしれません。
わたくしも、介護をしている中で、困惑したり、なさけなく思ったり、イラっとしたりといったことが少なくありません。
こんなとき、カッとせず、ひと呼吸おいて、認知症の人の心の内を想像してみましょう。
認知症は脳の病気であり、認知機能・知的機能が障害を受けています。このため、認知症ではない人の常識をあてはめることはできません。
その心や行動には次のような特徴があります。
- 中核症状(※)のうち、記憶障害(物忘れ・記憶できない)について自覚がある場合は、そのことについて強い不安を持っています。また、自覚がない場合、記憶がないことを指摘されると混乱します。
- 記憶は新しいものから失われて行きます。古いことはよく覚えているということは、よくあることです。認知症が進行すると、昔のことが現在のこととして認識されたり、ある時期からの記憶が失われます(自分の子供の存在が分からなくなるなど)。
- ものごとに対する正しい判断が出来なくなります。結果、自分に都合のいいことを言ったり、あきらかにおかしな主張・行動をしたりします。
- ものごとに対する強いこだわりが生じ、停止・解消させることがむずかしくなります。
- いままでできていたことができなくなること、自分が以前の自分と違ってきていることに強い不安を感じています。
※中核症状については、こちらの記事をごらんください。
以下では、代表的な症状についてまとめてみます。こうしたらいいよなどのご意見がありましたらお寄せください。
もの盗られ妄想の人への対応
認知症の方には被害妄想があらわれることが多くあります。とくに「もの盗られ妄想」は、その対象が介護者・近親者に向くことが多く、いわれのない嫌疑をかけられた人は、悲しく、腹立たしい思いをいだくことが少なくありません。
「もの盗られ妄想」の背景には、記憶障害と不安とがあります。ものがどこに行ったか分からないという記憶障害を認めたくないために、「誰かが盗った」という妄想になり、それが身近にいる近親者などに向いてしまいます。
覚えていないという不安が妄想としてあらわれますので、「もの盗られ妄想」は不安をわかってほしいという訴えかけの側面もあります。
さて、「盗まれた」「盗った」という訴えに対して、即座にそれを否定したり反論したりすると、混乱し、まずます意固地になることがあります。
よく、いっしょに捜すという方法をすすめられることもありますが、毎回では疲れますし、ティッシュやシャンプーなどの消耗品を誰かが使ったという訴えには、この方法も使えません。
まずは、たとえ泥棒扱いされたとしても、それは病気のせいだと割り切りましょう。そして、訴えを否定せず、共感をもって聞くことが大切です。
しかし、本人の妄想を積極的に認めたり、解決法を提案する必要はありません。本当は何を訴えたいのかを想像しましょう。それは、不安であったり、共感であったり、自尊心であったりします。
話を聞くということが、本人の気持ちを落ち着かせる一つの方法でもあります。
同じ話を何度も繰り返す人への対応
認知症になると多くの人が、同じ話を何度も繰り返したり、同じ質問を繰り返したりします。
これは、記憶障害によるもので、記憶が数分ともたない、あるいはまったく記憶できないからです。
したがって、本人にとっては、毎回がはじめて話すこと、はじめて聞くことなのです。
そういうものだと思って、イライラせず、親身になって話を聞き、あるいは返答しましょう。しんどいですけどね。
なお、何度も話したり聞いたりしてくることは、とくにそのことに関心があったり、何か他に訴えたいかけたいことがある場合があります。本人の心の内を想像してみることも必要です。
料理ができなくなった人への対応
認知症の比較的早期から進行するにつれて、料理だけではなく、服を着るとかお風呂に入るなどの行為ができなくなることが多くなります。
これは、記憶障害に加えて、認知症の中核症状である「実行機能障害」や「失行」が関係しています。
計画を立てて順序よく物事をおこなうことや、手順にしたがって進めていくことが、部分的に、あるいは全部ができなくなってしまいます。
以前出来ていたことが出来なくなってしまいますので、本人にとっては不安で自尊心をきずつけられることです。
このような人への対応は、自分でできることはなるだけ自分でするようにし、周囲はできないところだけ手伝うようにします。はじめから全部やってしまうと、本人は能力を失ったかのように傷つき、家事などをまったくやらなくなってしまいます。
なお、手順やものの置き場所を書いたメモを目に付くところに貼っておく方法も有効です。
このような状態でも、本人の自活はむずかしくなっていますが、まったくできなくなった状態では、どうしても介護者の見守りが必要となってきます。
とくに食事の準備は、介護者自身の準備もありますので、負担は大きくなります。そのような場合は、お弁当の宅配なども検討されるとよいかと思います(後記の宅配食のリストをご覧ください)。
まとめ
上に述べたことは、比較的早期にあらわれる症状です。
認知症が進行するにつれて、さまざまな症状があらわれます。
とくに「徘徊(※)」などの危険をともなう症状には、神経をすり減らされることと思います(わたくしの近親者には徘徊の症状がありませんので、想像するしかありません)
認知症の人には、つねに次のような対応をこころがけましょう。
- 否定しない
- 反論しない
- 共感をもって話を聞く
- 想像力を働かせる
- 笑顔を絶やさない
認知症の方も、私たちと同じ人間です。その人の心の内を想い、尊敬をもって接することが大切です。
※「徘徊」ということばを使わないようにしようという動きがあるようですが、くわしくありませんので、ここでは書きません。
介護する人は..
とはいうものの、介護する人にとって、ストレスも大きく、いつまで続くかわからない不安もありますよね。
介護する人の心構えは、次のとおりです。
- 一人で抱え込まない
- 完璧な介護をしようとしない
- 情報を収集する
- 介護を楽しむ
この項目については、こちらの記事をご覧ください → 「介護する人の心がまえ」
宅配食のリスト
2019/10/30 放送の日テレ系列のバラエティー番組
「今夜くらべてみました」で紹介されました。
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